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3 上昇  ボードレール

 
        3 上昇

湖沼の上方に、渓谷、
山々、森、雲、海原の上方に、
太陽の彼方に、エーテルの彼方に、
星々をちりばめた天球の果ての彼方に、

私の精神、きみは軽快に活動する、
そして、波間でうっとりする優れた泳ぎ手のように、
きみは深い無限のなかを楽しく縦横に走っている、
言語を絶する雄々しい快楽を伴いながら。

飛び立てよ、病の瘴気から遥か遠くへ、
洗い清めに行け、上層の大気のなかに、
そして飲むのだ、純粋で神のリキュールのような、
明るい火を、それはその澄んだ空間に満ちている。

霧のかかった生活に重くのしかかる
数々の心配事と悲しみを後にして、
幸いなのだ、力強い羽ばたきで、光あふれる
穏やかな園へ飛び出すことができる人は、

その考えが、ヒバリのように、
朝、空に向かって自由に飛び立つ人は、
― 人生のうえを滑空し、苦もなく
花々や無言の物たちの言葉を理解する人は!



4 万物照応


         4 万物照応

自然は神殿、そこでは生ける柱たちが
時々ざわめいた言葉を発する。
人間はそこを通る、象徴の森を横切って。
森は親しげな眼差しで人間を見ている。

夜のように光のように広い、
暗い深い、統一のなかで遠くからまじりあう
長い木霊たちと同じく、
におい、色そして音は応えあう。

子供の肌のように爽やかなにおいがある、
オーボエのようにかぐわしいのも、草原のように緑のも、
― 他に、腐敗したのは、豊かでそして勝ち誇っていて、

無限な物の広がりを持ち、
竜涎香、麝香、安息香そして香のように、
精神と感覚の激情を歌う。


5「私が愛する思い出は. . . 」 ' J'aime le souvenir. . . '


    5 「私が愛する思い出は. . . 」

私が愛する思い出は、あの裸の時代、
太陽神が彫像たちを好んで金色にしていた。
その頃、男と女は、身軽に
偽りなく、不安なく、楽しんだものだ。
そして、多情な空が彼らの背骨を愛撫したので、
彼らは気品ある諸器官の健康を行使していた。
大地の女神はその頃、豊かな産物にめぐまれ、
その子供たちを費用のかかる重荷とは少しも思わず、
普遍的な優しさでふくれた心をもつ雌オオカミであって、
褐色の乳房で世界を潤していた。
男は、優雅で、たくましく、頑健で
彼を王と呼ぶ美女たちを誇りにする権利があった。
果実たちは、凌辱がまったくなく、ひび割れひとつなく、
その滑らかで締まった果肉は、噛みつくことを要請していた!

詩人が今日、そうした生まれつきの偉大さを
男の裸や女のそれを眺めさせる場所で
理解したくても、
暗闇の悪寒が私の魂を包むのを感じるばかりだ、
激しい恐怖に満ちた、その黒い場面を前にして。
オー奇形者たち、彼らの衣服を嘆いている!
オー滑稽な胴体! 仮面にふさわしいトルソー!
オー哀れな肉体よ、ねじれ、やせ、腹が出て、ぶよぶよだ、
容赦なくて晴朗である実用の神が、
子孫を青銅の産着でくるんだのだ!
そして君ら、女らよ、アー!大ろうそくのように蒼白だ、
放蕩が彼女らをかじり、飼育している!
それから君ら、処女らよ、母の悪徳の遺伝と
生殖力の醜さのすべてを引きずっているのだ!

われら腐敗した国民は、確かに、
古代の住民に知られていない美をもっている。
心の潰瘍によってかじられた顔、
言うならば憔悴の美だ。
しかし、われらの遅すぎるミューズのそんな発明も
病的な種族が青春に対して、深い敬意を返すことを
決して妨げはすまい、
― 聖なる青春に対して、素朴な様子、優しい額、
流れる水のように澄んで明るい目に対して、
空の青、鳥たち、花々のように
その香り、その歌、その心地よい熱気を
気楽に、すべてのものに与えている青春に対して!


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